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「家で私にエロいことばかりしようとした」。夏期講習の帰り道、親友がうちに寄って毒を吐く。それで彼と別れたらしい。わかるよ気持ち、と頷くと「でしょ? やっぱ女同士が一番だ」。豊かな胸に白い肌。天然なのは玉に瑕だ。さっき言ったよ、今日両親不在って。私がわかるの、彼の気持ちの方なんだ。
本当に男って! 「彼のこと?」。夏期講習の帰り道、親友が私に尋ねる。うんそうだ。あいつ脳内エロばっか。隙あらば家に連れ込み、触ろうとした。「え、別れたの?」。そうよ。しばらく異性はいいや。女同士が心地いい。彼女は赤い顔して俯いた。どうしたの? 「……今日、うち両親いないんだけど」
深い山の林道脇。彼に続いて車を降りる。「ほら、妖しく三つの星が光ってるだろ?」。夜空を見上げた私の首を、彼が急に締め上げる。ここなんだ。親友を含めて3人、彼が女を埋めた場所。2か月前、偶然を装って接近し、夢中になったふりをした。霞む意識で声を聴く。同僚だった。「手を放せ、県警だ」
「すごい山奥」。助手席の彼女が囁く。2か月前、よく行くバーで隣になった。軽く口説くと夢中になり、べったり俺にもたれかかる。死んだお袋みたいに媚びない女が俺の理想だ。なのに誰もが依存する。「どこなの、妖しい三つの星が見える丘って?」。この先さ。明日から四つだ。過去に女を3人埋めた。
8月の深夜の空が朱に染まり、爆撃機の機影が見えた。まだ米軍は空襲するんだ。夫がバケツを握って立ち上がる。南方で戦傷し、半年前に帰ってきた。戦友に後ろめたいのだ。「必ず戻る。一人にしない」と言い残し、日付が変わった15日、家を出た。一人じゃない。二人だよ。お腹に手を当て、無事を祈る。
18歳で娘を身籠る。我が家とのちの夫の親は、出産に反対した。「産みなさい。世話はする」。意外にも、賛成したのは祖母だった。「命は大事。繋ぐこと」。大往生まで同じ言葉を繰り返した。娘は今日で18歳。成人だ。遠い昔の同じ日に、未明の最後の空襲で、祖父は命を落としている。今日終戦から79年。
中学生の幼なじみを彼の部屋まで迎えに行く。部活動の朝練なのにまだ寝てた。呆れた私は布団越しに馬乗りし、体をゆする。「起きてるぞ」。顔だけ覗かせ彼が言う。まるで幼児の言い訳だ。ならば早く出てきなよ。布団の上から彼に重なり頬をつねった。「……幼児じゃねえからいろいろ起きて出られない」
布団越しに重みを感じる。「部活の朝練行くよ!」と声がした。顔だけ出すと、制服の幼なじみが跨ってる。もう中学生。ガキじゃねえのに、また母ちゃんが無断で部屋に通したらしい。「起きなって」。馬乗りしながら尻をボンボン押し当てられる。……起きてるぞ。ガキじゃねえから男の事情でいろいろと。
保母さん、お嫁さん……。小学時代、女子が未来の夢を語っていた。まだ見ぬ星を探すんだ、と語った私は変人扱い。大学院に籠りつつ、自分でも本当にそうだと苦笑する。「僕も星を見つけたい」。そう言った彼と20年ぶりに再会し、告白された。公務員になっている。いいの夢は? 「うん、見つけたから」
女子高の親友に、嘘をついて口づけた。友人が同性を好きになったと相談し、「全然あり」と答えた彼女を不意打ちした。「……驚いた。でも女子同士でもできたでしょ? 上手くいくよ」。私とは、と言いかけて、勇気が出ない。「あのさ」と彼女が呟いた。「私にも、相談したい友だちの話があるんだけど」