//=time() ?>
夏休み明けには文化祭。自主登校で準備中、先輩がやってきた。「企画書点検したくて」。生徒会室に2人きり。制服が汗ばむのを自覚する。暑さだけが理由じゃないと悟られるかな。盗み見た先輩も汗を拭ってる。暑いですねと囁くと、先輩が俯いたまま呟いた。「汗ばむ理由、お互いちゃんと考えようか?」
後輩が一人で資料と格闘していた。「秋の文化祭の準備です」と彼女が笑う。夏休み、2人きりの生徒会室。はす向かいに腰を掛け、僕も書類を点検する。汗を拭うと、彼女が手持ちの送風機をこちらに向けた。「暑いですよね、先輩」。お前、絶対わかってやってるだろ。近づかれ、ますます汗が止まらない。
男の子みたいな女児だった。遊び相手はいつも彼。夏が巡ると、隣町でカブトを探した。彼に誘われ、久々にあの場所に連れ出される。小さな林は綺麗な宅地に変わっていた。大事な記憶だったのだろう。彼が涙ぐんでいる。思い出はまたつくればいいよ。17歳の夏休み、私たちは、幼なじみから恋人になった。
隣町に林があった。夏が巡ると幼なじみの女子を連れ、カブトムシを探しに行った。窪地にシートを敷いた秘密基地。今はどうなっているんだろう。自転車に彼女を乗せてペダルをこぐ。10年ぶりだ。林は宅地になっていた。「17歳でしょ、感傷的に泣かないの」と彼女が囁く。「また2人の基地をつくろうよ」
大学で彼女と出会い、お互い初めてつきあった。彼女のことを大好きだ。繋がりたいとも思ってる。好きだから抱きたいのか、抱きたいから好きなのか。愛情と欲望の境界線がはっきりせず、自己嫌悪に苛まれる。交際1年目のお泊り旅。彼女は「いいよ」と応じてくれた。少したじろぎ、今夜僕は答えを知る。
目覚めると、彼が寝息をたてている。つきあって1年目の小旅行。初めてを終えた後、抱き合って眠ってしまった。自分の何かが変わりそうで、臆病な私は彼の求めを拒んできた。待つよ、と彼は言ってくれた。ぬくもりに触れ、私は思う。そうか、こんなふうに変わるんだ。彼の全てが愛おしくてたまらない。
大学近くのバーで飲む。偶然、同性の後輩もやってきた。この間、同じ男子が私と彼女を同時に口説いていると知ってしまう。酔っ払った後輩が「本当に不誠実。つきあう女性の気が知れません」とくだをまく。そうだね。「先輩、やめといた方がいいですよ」。うん……ねえ、あなたは当然、おりるんだよね?
先輩に偶然会った。大学近くの夜のバー。離れて飲むのも不自然で、女2人でカウンター席に並んで座る。酔っ払い、彼の悪口で意気投合。「私とあなたに同時に粉かけるとかありえない」と先輩。本当に酷いです。いいなと感じた自分が馬鹿みたい。「でしょ? で、諦める?」。……先輩はどうなんですか?
「後輩の女の子に告られた」と相談される。同じ高2の幼なじみ。蓼食う虫だ、と笑って背を押す。後輩と並んで帰る彼の背を、校舎からぼんやり眺める。「お前のことは何でも知ってる」。そう笑う彼に甘えてきた。ぎゅっと胸が痛くなる。あんたでも知らないことに気づいたよ。私、こんなに嫉妬深いんだ。
緊張したデートの帰り、先輩の幼なじみと出くわした。彼と同じで一つ上。「浮気されたら私に言ってね」と微笑まれる。「するか馬鹿。ラブラブだ」。彼が私を抱き寄せた。「ご馳走様」。舌をのぞかせ彼女が立ち去る。「ごめんな、あいつ口が悪くて」。曖昧に笑みを返して胸で思う。彼女が心底羨ましい。