掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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ソファーの下からプルが出てきた。同棲中、彼とその瓶ビールをよく飲んだ。サイズが私の指とぴったりで「指輪買う時持っていく」と彼は笑った。幸せで2キロ太った。でもお互い気づいてしまう。甘やかさだけじゃ、生活は成り立たないと。プルをはめると少しきつい。当分禁酒だ。痩せて涙が枯れるまで。

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「帰りますね」。勤務先の後輩が高台の公園を去っていく。南京錠に記名し、フェンスに吊るすと結ばれる――。告ってくれた後輩と、都市伝説に従おうとした。振り返り、彼女が笑う。「デート先の使い回しはいけません」。発見し、悟られたんだ。8年前に吊るした錠と、高校の初恋相手を忘れられないこと。

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いつのノーコピさんも素敵ですよ✨
2022年ごろから今のような感じでしょうか?
下のイラストを拝見したとき、改めて春さんすごいなあ、と思いました😇

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高台の公園で、10年前の南京錠を見つけ出す。高校の初恋相手と私の名。記名しフェンスに吊るすと別れない、と言われてた。「別れたじゃん」と婚約者が笑ってる。その後2人と交際した。恋はいいや、と思ったところで彼と出会う。「都市伝説、結ばれる、が正確らしいぜ」。初カレが私の肩を抱き寄せる。

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メイクし高校の友だちと下ネタで笑い合う。本音は言わない。化粧は鎧だ。親は私に興味がない。誰かにわかってほしいのに、臆してギャルみたいに振る舞ってる。「お前、寂しいんだろ」。隣の男子に言い当てられた。理解してくれそうな気持ちがした。近づきたくて不器用で、ちょっかいに恋心を忍ばせる。

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彼女の通夜で誰かが囁く。「やっぱギャルだ。繁華街で男に刺された」。犯人は通り魔だ。そこにいたのは僕の家の近くだからだ。反論しかけ、自分も色眼鏡で見てたと悔やむ。高校でちょっかい出され続けてた。家までつきまとわれキスされた。「ギャルっぽいけど信じてほしい。キスは初めて。初恋なんだ」

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元水泳部の幼なじみをプールに誘う。夏休み、高校の友だちと海に行く。泳げないから事前練習しときたい。「スク水かよ。先週買った水着はどうした?」。一緒に選んでもらったやつは本番用。君とだし、これでいいかなって。「よくねえよ」。何で? 「……ツボなんだ。惚れて海に行くなと言いたくなる」

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自宅の前で幼なじみに捕まった。家が隣で17年。そのまま水着店に連行される。夏休み、男女交えて海に遊びに行くらしい。「男子が見ても可愛い水着、教えてよ」。……いいじゃん今あるヤツで。「スク水だけど?」。僕は慌てて布地多めの水着を探す。スク水は駄目だ。僕も含めたある種の男のツボなんだ。

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別れよう、と彼女に告げた。後味が悪いまま、一夜を過ごし「力」に気づく。時間を1日巻き戻せる。別れを告げる前まで戻ろう。そう考え思い留まる。きっかけは彼女の些細な失言だ。心のキャパが広ければ、受け流せた。こんな「力」じゃやり直せない。復縁を望む前、僕はもっと強くならなきゃならない。

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失言し、彼に振られた。泣いて目覚めて「力」に気づく。1日だけ、時間を戻せるようになっていた。遡り、口をつぐもう。そう考えて、私は気づく。失言はきっかけだ。優しい彼にもたれすぎた。涙を拭って前を向く。こんな「力」じゃやり直せない。いつかまた振り向いてもらうため、私はもっと強くなる。

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