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20歳の彼女を家から送る。駅前の焼肉店に立ち寄った。「ホルモン盛り」と彼女が頼む。「もう夜だし、君もニンニク醤油で食べちゃいなよ」。精のつくものばかりだ。ほかの客に勘繰られる。「もういいじゃん。本当にそういう関係なんだし」。僕は照れ、コブクロを箸でつまむ。さっきお互い最初を終えた。
夜遅く彼の家から駅へと向かう。実家の私はお泊りできない。「何か食おう」と同じ20歳の彼が言う。いいけどあまりお店やってないよ。「もう入っていいと思うんだ」。笑顔の彼は焼肉店の扉を押した。好物だけど照れ臭い。焼肉店の男女って、そういう目で見られるんだよね? さっきお互い最初を終えた。
綺麗な女性と幼児を連れた彼を見かける。高校時代、元カレと破局後に「交際したい」と言ってくれた同級生だ。元カレが忘れられず、私は拒み、元カレとよりを戻して結婚した。帰宅し、また夫に殴られる。子どもはできない。もしあの時、同級生に頷いてたら――。幸福な世界線を夢想して、後悔の涙を流す。
「嫁とは別れた」。元カレが高校の同窓会で苦笑する。私たちは17歳の1年間を共有した。互いに幼く、口喧嘩を拗らせ破局した。ずっと彼が忘れられず、違う世界線を夢想してきた。やり直せる、と感じたところで目が覚める。独りきりの1DK。30歳の疲れた女が鏡の中で泣いている。世界は何も変わらない。
高校に入学し、同級男子に一目ぼれした。想いは通じ、告ってもらえる。「その昔、初恋は叶わないと思ってた」。うん? 私の前に初恋相手がいたってこと? 「いや、お前が最初に恋した相手」。何だそれ。まあいいや。私にも叶わなかった初恋あるし。元気かな。彼に似た、幼稚園の同じクラスの男の子。
「初恋相手? 私じゃないの?」と彼女が膨れる。高校に進学し、この春同じクラスになった。「もう忘れたの? 初めて好きになった女の子だって言われたよ」。忘れてるのはそっちの方だ。お前ほど僕は変わってねえぞ。初対面だと思ってるだろ。昔「結婚してね」と囁かれたんだ。幼稚園の同じクラスで。
継父が死んだ。ママが涙を流してる。まだ私が幼かった10年前、ママが再婚、パパになった。ママよりも一回り年下で、兄のように私は慕った。その感情が移ろったのは高校に進んだ2年前。躊躇うパパを押し切った。愛する人が病死した。嗚咽が漏れる。喪失感と、最期までママに悟られなかった安堵の念で。
年下の夫が死んだ。10年前に再婚した。幼かった私の娘もよくなつき、本当の家族のようだった。高校の制服姿で綺麗な娘が涙を流す。安堵と憎悪で私も泣いた。よかった、バレずにこの子を守れて。悔しい、娘に心を奪われて――。愛する夫はいつしか娘を女と見ていた。以来、密かに食事に微毒を混ぜ続けた。
高校帰り、また彼の家を訪れる。「最近姉貴の元気がない」と聞かされた。恋煩いかな。面識あるし、私が話を聞いてみるよ。彼には自室にいてもらい、お姉さんの部屋をノックする。美しく、妬いた瞳に魅入られそうだ。思った通り。でもどっち? 好きなのは弟ですか? それとも両方いける私でしょうか?
「お姉さん、元気?」。高校で彼女に訊かれる。何度もうちに遊びに来てるから、女子大生の姉貴とも顔見知りだ。マニッシュで活発なのに、最近ため息ばかり漏らしてる。「恋煩い、なのかもよ。私でよければお姉さんから話聞こうか?」。え、誰だか見当ついてるの? 「……多分、私たちの知ってる人だ」