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タワマンのエレベーターの戸が閉まる。一つ違いで17歳の妹に、いつもみたいに抱き締められた。20階の自宅までは30秒。お互いに自制が働く限界だった。僕は初めて口づける。妹は恥じらいながら「私も我慢できなくなっちゃうよ……」と囁いた。いいよ、僕は覚悟を決めた。さっき、40階のボタンを押した。
エレベーターの戸が閉まる。タワマンの20階まで30秒。高校には友人の、自宅には親の目がある。ボタンを押した優しい彼を、いつもみたいに抱き締めた。互いの鼓動が高まる頃、戸は静かに開くのだ。これでいい。この先に明るい未来は存在しない。残酷な黄昏時の恋人ごっこ。一つ差の優しい兄に恋をした。
母に叩かれ育てられた。中途半端に楽器を弾いてた大学時代、復讐みたいに女を抱いては捨てられた。彼女だけが「君は無価値じゃないよ」と受容してくれた。俺は音に向き直る。卒業後、距離ができるが追いかけない。俺を救った彼女に対し、返せるものが何もない。いつか届けばいいな。作りかけの恋の歌。
楽器が好きで、でも喧嘩っ早くバンドは続かず、女にもだらしない。元カレはそんな人だった。随分泣いた。でもその何倍も笑わせられた。大卒後に距離ができ、3年経つ。堅実な会社の上司に求婚された。「何泣いてるの?」。何でもない。頷いた帰り道、上司の車のラジオから、懐かしい歌声が流れてくる。
大学の学食で、隣の彼女を盗み見る。半年前、元カレに振られていた。僕は同じサークルで、つかず離れず彼女のことを慰める。当時、彼女はピアスをしていた。元カレからの贈り物だ。別れて外し、今や穴はほとんど見えない。胸の疵まで癒えたように感じられ、僕は秘めた想いを言葉にしようと心に決める。
失恋した。元カレとは大学のサークルで知り合った。彼に染まり、貰ったピアスをつけるため、穴をあけた。「もう半年。元気出せ」。学食で、隣に座ったサークル仲間の別の男子が、耳に目を向け慰める。確かに時間はピアスホールを塞いでくれた。でも見えない心の穴は、時とともにまだ大きくなっていく。
20年前、妻と別れ幼い娘を奪われた。あれがケチのつき初めだ。以来何も上手くいかず、安宿で寝起きしながら日銭を稼ぎ生きている。「寂しいですよね。私もです」。風俗嬢が微笑んだ。なぜか抱けず、添い寝を頼む。ぬくもりに懐かしさを感じてふと思う。幼い顔しか記憶にない。娘は元気で幸せだろうか。
客の男は中年だった。日々の疲れが滲んでる。風俗嬢の私と同じだ。母は父と別れた後、幼児の私を遺して死んだ。客の多くは私みたいに心に孤独を抱えてる。「悪い、なぜかできねえ。代わりに一緒に寝てほしい」。男が呟く。硬いベッドで寄り添った。どうしてだろう。顔も忘れた父との添い寝を思い出す。
結婚後、夫は変わった。言葉で威圧し手をあげる。幼い娘と私は逃げた。相手選びは私の責任。でもこの子には罪がない。拗れた末に籍を抜き、育児と仕事に必死になった。瞬く間の25年。6月の花嫁だったのに、自分は不幸と何度も思った。でも間違いだ。花嫁姿の娘を眺め、母親としての幸福を噛みしめる。
「実はママも6月結婚なの」。式場で母がドレスの私に目を細める。え、初耳。「6月の花嫁は幸せになれるって言うでしょ?」。散々苦労したじゃない。「娘を育て、お嫁に出せた。幸福よ」。男女から家族になれば、幸せは一つじゃなくなるんだね。当時私は幼くて、よく父を覚えてない。ママはバツイチ。