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幼なじみと待ち合わせる。彼には散々「お前を異性と見てねえよ」と言われてきた。思春期に、何となく距離を置かれ、以来10年会っていない。あのあと私は気がついた。随分変わり、今なら寄り添えると思うんだ。彼が私に息を飲む。手術もしたし戸籍も変えた。なあ、仲よくしようぜ、今度は男同士として。
ずっと俺はモテてきた。何人かに理由を訊くと「顔が良く、言葉もアレも上手だから」。女と同棲し始めた。初めて本気で惚れた女だ。容姿でもテクでもなく、心を愛してほしいと俺は願う。でもこの子もほかと同じらしい。匂わせた架空の浮気相手を詮索せず、俺と重なり身を震わせ、恍惚の涙を浮かべてる。
「愛してるのはお前だけ」。囁く彼にキスされる。気づいてるよ。私と同棲しつつ、ほかの女がいることに。もう別れる、と今夜も胸で繰り返し、言葉にできず抱かれてしまう。「涙ぐむほどよかったんだ」。終わって頭を撫でられて、私は自分に絶望する。こんなに憎んでいるくせに、顔と体で離れられない。
卒業前日、高校の腐れ縁の同級女子が頭を掻く。同性の後輩に、僕の第二ボタンを貰っていいかと尋ねられ、いいよ、告っちゃえ、と答えたらしい。「私のことが妬ましく、嫌いと言われた。意味不明。あんたに好きな子いるとも匂わせてた。誰よ?」。さあ、と応じ心に決める。諦めて後輩にボタンを渡そう。
「部長の第二ボタン、私が貰っていいですか?」。卒業直前、同じ部活の後輩女子が呟いた。なぜ私に断るの? 彼は単なる腐れ縁。大学も一緒とは思わなかった。彼女いないし告っちゃえば? そう言うと、後輩が唇を噛んで涙ぐむ。「そんな余裕も、独りの理由も気づいてない。先輩が妬ましくて嫌いです」
夫が昔の写真を眺めてる。つきあい始めた高校時代、パンクが好きで、一時頭をモヒカンにしてた。「マジ黒歴史」。私が見つけた以外の写真もあるんだ。「やめとけ。絶叫するぞ」。いいから見たい。写真を渡され、私は羞恥の叫びをあげる。「黒歴史だろ? BL本によだれを垂らす瓶底眼鏡の腐女子のお前」
片づけの手を止めて、妻が古い写真を見つめてる。何の写真? 「10年前の高校時代の黒歴史」。俺とつきあい始めた頃か。見せてよ。「やめなよ。絶対辛い気持ちになる」。元カレとか? ますます気になり、拒む妻から写真を奪う。うわ、確かに辛い。「でしょ? パンクにかぶれたモヒカン頭の自分の姿」
「友だちとしてしか見られてないと思うけど……」。高校の卒業日、同級男子に告られた。遠くからこっちを見つめる視線に気づく。よく彼と小突きあってるクラスの女子だ。君は鈍いね。本当は私もほのかに好きだった。でも諦める。友だちとしてしか見てもらえず、切ない想いをしている子、そばにいるよ。
「もう当たって砕けろだよ」。高校の卒業日、腐れ縁の女友達が微笑んだ。片想いの女子がいる。高嶺の花だが諦められず、気の置けない彼女に相談してきた。確かに今日が最後だな。ありがとう。勇気を奮い、告ってくる。僕を見て、今度はなぜか涙ぐみ、彼女が小声で囁いた。「……絶対に砕けろだからね」
独りが嫌でコミュ力と容姿を磨いた。高校では一軍女子と呼ばれてる。大勢との薄い会話とマウント合戦。孤独は深まり、私は気づく。何軍かは関係ない。自ら引いた心の線が私の孤独の元凶だ。もう私は線を切る。だから自称三軍の、君も線を切ってほしい。君さえそばにいてくれれば、私は孤独を感じない。