//=time() ?>
ねえ私で何人目? 「7人目」。彼がベッドで指を折る。5年ぶりに再会し、お酒の流れでお泊りした。高校時代の初恋相手。お互い嫉妬を隠して平気を装い、キスもせずに破局した。「上手かった。お前こそ何人目?」。同じぐらいと微笑んで、心で凹む。私は成長してないや。また演技した。初めてなのに。
「風邪で3日寝込んでる」。18歳の幼なじみがLINEを寄こす。両親は旅先らしい。水着持参で家に行く。まずはお風呂でサッパリだ。浴室で俯く彼の背を洗う。「照れてんの? 見慣れてるだろ」。いや、風邪の理由の痕跡までは見慣れてない。してるんだ、初カノと。残っているよ、背中に微かなひっかき傷。
両親が旅行中に熱を出す。3日寝込んで18歳の幼なじみに助けを求めた。「入浴しよう。手伝うよ」。浴室で待ってると、彼女が遅れて入ってきた。「ちゃんと水着持ってきた。何よ今さら赤い顔して」。そうだった。初カレができたと言っていた。確かに水着は見慣れてる。動揺の原因は、胸元のキスマーク。
病院から帰宅する。10歳下の妹が夕食を作り待っていた。両親は惚れっぽく、僕が20歳の10年前、ともに浮気相手と蒸発した。以来、兄妹で暮らしてる。その夜、また妹に好きだと言われた。一度きりと約束し、僕らは交わる。妹にいつ明かそう。余命半年と言われたこと。僕らは連れ子で血が繋がらないこと。
病気で10歳上の兄が逝く。まだ私が幼い頃、両親は蒸発し、2人だけで生きてきた。兄を失い、20歳の私は天涯孤独だ。職はあるけど希望がない。後を追おうと考えて、嘔吐する。半年前に私が求めた一度きり。過ちだったと感じてた。それが微かな希望に変わる。お腹に手を当て考える。兄の子を出産しよう。
「子ども100人連れてこい」。重病で臨死し、冥界の門番に囁かれる。入院中の小児病棟。僕は次々同世代をあの世へいざなう。期限の5年まであと1日。夜、100人目の少女に打ち明ける。「それで君は生きられるんだ」。微笑んで差し伸べられた手を払う。遠のく意識で僕は願う。生き延びろ。大好きだった。
また同室の少女が死んだ。次は私の番かと怖くなる。重病ばかりの小児病棟。それでも私は恵まれてる。父母は毎日見舞ってくれる。長患いで虚ろな目をした彼の許には誰一人訪れない。ある夜、ふと目覚める。暗闇に彼が立っていた。寂しいんだね。私はそっと手を伸ばす。「……ごめんな、俺は死神なんだ」
また夫と喧嘩した。10年前の写真を眺め涙ぐむ。夫に告白される直前、高校の卒業式後にみんなで撮った一枚だ。私は涙を流し、夫は左で微笑んでる。「さっきはごめん」。気づいた夫が頭を下げた。「忘れてた。一生好きで離さない、と告げたこと」。私も言った。式の前、私を振った右の男子にすがりつき。
妻が写真を見ながら涙ぐんでる。さっきまた、些細なことで喧嘩した。肩越しに手元を覗く。高校の卒業式後に仲間と撮った一枚だった。制服の妻は涙を流し、左の僕は微笑んでる。10年前のこの後すぐ、僕が告ってつきあい始めた。一生好きだ、離さない。伝えた言葉を思い出し、ごめん、と詫びて妻を抱く。
「シリウスみたいに輝く君を、オリオンのように僕は守る」。冬空を見上げ彼が言った。オリオンは神話の勇者。星座で光を放つのはベテルギウスだ。半月前、高校の天文部の先輩に「やり直そう」と囁かれた。どんどん心が引き戻される。胸で詫び、プロキオンをそっと見る。三つの星が大三角形を作ってる。