掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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陽キャな彼はMらしい。高校の同級生で交際半年。「クリスマス、エッチなサンタのコスプレして」と頼まれた。また私に叱られたいの? 「それじゃ俺がMみたいだろ」。違うんだ。「俺もコスプレするからさ」。Mじゃなく相互だったらまあいいか。で、そっちは何やるの? 「鞭に打たれるトナカイさん❤」

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救命医の夫の不倫に気づく。相手は病院の看護師だ。待ち伏せし、別れてほしいと懇願する。「彼が愛してるのは私です」と嘲笑された。夫は私の全てだ。彼女も夫も許せない。ネットを頼りに、自宅で密かに製造する。今日はともに勤務日だ。病院まであとわずか。2人を殺す爆弾の、起爆装置が誤作動する。

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病院近くで爆発が起き、患者が大勢搬送されてきた。救命医だから治療の優先順位を決めねばならない。生死を彷徨う妻がいた。最優先の赤いタグをつける。忙殺され、妻に戻ると治療を受けず死んでいた。なぜだ!? 「救命不能の黒いタグがついてました」。不倫中の白衣の天使が、死神みたいに笑っている。

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老妻に看取られる。若い頃、無数の美女を抱いてきた。モデルの傍ら起業して、羽振りも良かった。老いが始まり経営が傾くと、女は全員去っていく。どん底で半ば諦め、地味な妻と入籍した。過去の栄華に未練があった。でも今は、妻との死別がこんなに悲しい。末期に俺は本当に大事なものに気づかされる。

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「ありがとう」。老いた夫は呟き死んだ。最期まで黙っていたことがある。二番目に好きな人と結婚した。一番好きな相手に振られたからだ。夫の頬に手を当てる。涙が溢れた。去年、風の便りで一番目の彼の逝去を知る。あの時、私は泣けなかった。ありがとう。歳月をともに歩み、私の順位は逆転していた。

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終えた後、彼女が涙ぐんでいる。22歳の同い年。ふと高2が蘇る。バイト先の女子大生と交際していた。「未熟だね」。最初を終え、拗ねたように微笑まれる。振られた後も言葉が頭を離れずに、無数の女を抱いてきた。まだ僕は満たせないのかな……。先輩以来の愛する彼女。涙の理由を想像し、胸で震える。

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大学近くで彼女と落ち合う。三つ上の社会人。夜の美術館でデートして、お洒落なバルに案内される。美人で大人。この半年、リードされっぱなしだ。「さ、帰ろう。寂しくなったらLINEしなよ」と頭をぽんぽん叩かれた。初めて俺からキスをする。LINEはしません。俺だって男です。今夜、泊っていいですか?

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生徒会の同窓会で先輩と再会する。高校以来30年ぶりだ。「病児を授かり、3年前に早期退職し主夫だって」と同級生が囁く。共働きの妻のキャリを尊重し、家事育児を選んだそうだ。同級生は「昔は文武両道で格好良かったのにね」と苦笑する。モテすぎて、実は少し苦手だった。私には今の方が素敵に映る。

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先輩と会うのは高校以来30年ぶりだ。生徒会の同窓会。優しくて文武に優れ、よくモテた。商社に勤め社内結婚したらしい。病児を授かり、3年前に早期退職したという。「妻がキャリア志向でね。家事育児の毎日だ」と苦笑してる。既婚者だけど、私は少し期待してた。先輩の疲れた顔に、憧れが消えていく。

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また彼女が賞を得た。同じ大学の文芸部。時流を読み、流れに合わせ物語を量産する。俺は私小説しか紡げない。俺と文字とは不可分で、誰とも違う自己存在の発露だからだ。「才能があるのは君だ。私は技術で書いている」。裸の彼女が薄く笑う。俺は別れを覚悟した。赤裸々にこの嫉妬と情事を字にしよう。

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