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彼は私小説を書いてきた。大学の文芸部。流行らないと言われても「自己存在の発露なんだ」と頑なだった。初めて受賞し、共感できると激賞され、著書が10万部を超えた夜、「これは違う」と首を吊る。誰とも違う誰かになりたかったんだね。流行作家に私はなった。彼ではなく、今は移ろう時代と寝ている。
駅前でJKが絡まれてる。咄嗟に不良の腹へと拳を決めた。デートに遅れた先輩が、茫然と私を見てる。元ヤンを封印し、黒髪・眼鏡で大学に進学した。真面目な彼とは釣り合わない。恋は終わりと俯くと、不良が再び倒れ込む。私を襲おうとしてたのだ。「……僕もなんだ」。先輩が、見事な蹴りを入れている。
大学の後輩と交際した。眼鏡で小柄、黒髪だ。「先輩とは釣り合いません」と拒む彼女を口説き落とす。待ち合わせた駅前で、不良が女子高生に絡んでた。一瞬迷っているうちに、彼女の拳が腹を抉り、不良は倒れる。マジで!? 僕に気づき、彼女は俯き呟いた。「……釣り合わないですよね、元ヤンなんです」
人類は結束し、宇宙からの侵略者に勝利する。残党狩りの名目で、僕は彼女と孤島に渡った。「避妊はいらない」。その夜、全裸で彼女が囁いた。彼女がヒトに擬態した、侵略者だと気づいてる。種が異なれば命はできない。愛する彼女にいつ事実を伝えよう。この島から再起を図る。僕も彼女と同じ、異星人。
星からの侵略者はヒトに擬態する。人類は力をあわせて立ち向かい、今やほぼ完勝だ。残党を討つために、私と彼は孤島に渡る。その夜、自ら服を脱ぎ、いいよ、避妊しなくって、と囁いた。気づかぬふりで、彼は私を抱きしめる。やがて愛する彼に殺されるのだ。2人の命は宿らない。種の壁は超えられない。
「今は受験が最優先」。高3の彼が言う。同感だけど、そのくせキスをねだるし触るじゃない。来月はクリスマス。閃いて、バイトし何か贈ろうかな、と言ってみる。「いいよ、お互い金欠。今年は我慢だ」。絶対? 「一切不要」。言質取ったよ? 「二言はない」。プレゼント、私だって言ってもだからね?
「短期バイトしようかな」。高3の彼女が呟く。来月のクリスマス? いいよ、受験勉強優先しようぜ。「プレゼントほしくない?」。今年は俺も贈れない。まずはそろって合格だ。「本当にいらない?」。我慢する。「金欠でも贈れるものがあるんだけれど」。だから我慢するって。「プレゼントが私でも?」
終業間際、新システムがダウンする。高校の同窓会に間に合うかな。訪れた保守会社の担当に驚いた。8年ぶりに会うはずだった元カレだ。卒業時の口喧嘩が棘のように心に残る。「修復には時間がいるな」と彼が囁く。いいよ、ここで会えたから。直ったら伝えよう。あの時ごめん。私、上司と結婚するんだ。
退社寸前、上司に呼ばれた。新規顧客のシステムが不調らしい。今夜は高校の同窓会。参加する元カノは僕が来るのも知っている。8年前の卒業時、口喧嘩を拗らせ破局した。「予定があります。早く直して下さい」。客先で開口一番、急かした女性が息を飲む。いや、修復にはいずれも少し時間がかかります。
深夜、橋上で彼女を見る。いつも孤独な同級生。自ら足に紐を巻き、川に身投げしようとしていた。俺は咄嗟に腕を掴み、紐を切る。「親に殴られ、家にも高校にも居場所がない」と彼女は泣いた。何だ俺と同じかよ。「……ところでなぜカッターを持ってたの?」。黙っていよう。手首を切る気でいたことは。