掌編小説（140字）＠単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ

女子高で後ろから胸に触れられた。「また成長したね」と同級生が笑ってる。「巨乳で長髪、背は低い。絶対放っておかれない」。赤面し、私は俯く。「羨ましい。私なんて貧乳、短髪、長身だもん」と苦笑してる。昨日また、知らない男子に告られた。ねえ、と私は心で囁く。あなたは私を放ったらかしだよ？

日曜日、幼い娘と夫が寝ている。結婚前、私はモテた。異性と遊び酔い潰れる。あんなに嫌った両親と同じ轍を踏んでいた。「何があっても俺はお前を見捨てない」。あの時の、のちの夫の一言が、私を変えた。穏やかな幸福を噛みしめつつ、胸が苦しくなる。打ち明けるのは正義だろうか。娘の本当の父親を。

娘が男性アイドルに夢中になってる。高校で彼氏ができたばかりだろ？　「パパ、推しは届かぬ前提で、リアルと別だよ」と言い返された。高２の自分が蘇る。当時の彼女はアイドル好き。理解できずに嫉妬した。思春期の娘を持ってやっと気づく。悪かった。あれは現実で目移りしない役割も果たしてたんだ。

女子高の友だちが気になる男子を試しに誘った。「トレッキングに連れ出された」。へえ。「山頂でストレッチ。次はジムで競泳だ、って」。ああ。「彼、脳まで筋肉だった」と嘆いてる。文系女子とは合わないね。言っておくからLINE教えて。「え、何て？」。体育会で筋肉フェチの私にとってはストライク♥

「最初の映画がアニメなのよ」と女子高の友達がため息つく。気になる男子とお試しデートをしたらしい。「そのあとアキバでフィギュアと同人誌」。なるほど。「ずっと蘊蓄喋ってた。あの人、いいの見た目だけだ」。連絡先教えてよ。一言言ってくる。「え、何て？」。内緒だけど、腐女子の私のど真ん中♥

高校の友人が彼と別れた。浮気性だし、良かったじゃん、と私は彼女を慰める。「でもいいところだってあるんだよ」と涙ぐんで反論された。「経験すればわかるはず。初めの相手は好きが消えても想いが残る」。わかるよ、と私は胸で囁いた。内緒だけど私は彼の元カノだ。最初を捧げ、まだ心に想いが燻る。

「浮気性だし、良かったじゃん」。高校で友人に慰められる。半年続いた彼と別れた。「見た目だけ。もう忘れて次行きな」。でもさ、優しいし、いいところだってあるんだよ。彼女の言葉は正しいのに、思わず反論してしまう。きっとあなたも経験すればわかるはず。最初の相手は好きが消えても想いが残る。

同じ理系の男子を誘い、リア充を壊す爆弾を完成させる。１年前、互いに二股掛けられ捨てられた。元カレと元カノに復讐しようと考えた。でももういらない。秘密を抱えた小部屋の作業。私と彼はいつしか強く惹かれ合う。「捨てに行こう」。彼に頷き爆弾を車に乗せる。浮ついてた。爆弾は微動で破裂する。