掌編小説（140字）＠単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ

先天的に心身に不調を抱え、もう20年、彼女は僕が働く施設で暮らす。親は先立ち、年の離れた妹だけがずっと見舞いにやってくる。中学から姉をケアしてきたらしい。「すきでした。いもうとをおねがいします」。死の前夜、驚くほど明瞭に彼女は言った。涙を拭い僕は誓う。好きな人の妹を全力で支えます。

10月3日までに40話＋エピローグを公開した長編『ぼくと初音の夏休み』（https://t.co/oBi5GRJcn5）。
投稿先のノベプラ用以外に、㊧まかろんKさん（https://t.co/tOfmk8Xb18）と㊨ノーコピーライトガール・春さん（https://t.co/9IWHxsiYx2）のフリイラお借りした表紙も創りました。絵の力、偉大です😇

年の離れた姉が死んだ。大好きな姉だった。生まれつき心身に不調があり、先に逝った老いた親には「お姉ちゃんをよろしくな」と中学から言われ続けた。勉強も恋愛もできぬまま、パートの私は35歳で自由に戸惑う。「いつでも相談して下さい」。姉が慕った施設の男性職員に、メルアドのメモを手渡される。

10月３日でノベプラに全話投稿済みの長編『ぼくと初音の夏休み』にその後も複数感想いただきました🙏
ノーコピーライトガール（春）さん（https://t.co/9IWHxsiqHu）のフリイラお借りしたバージョンの表紙作ってみました😊

ジャンル：日間2位 / 週間2位 / 月間1位 / 年間5位
https://t.co/oBi5GRIExx

できた、と同い年の彼に告げた。３か月前、大学の卒業旅行で避妊に失敗していたのだ。「望む会社に入ったばかりのお前に本当に申し訳ない」。彼は詫び、求婚された。キャリアこそ幸福だと思ってた。でも怪我の功名で、私は別のことにも気づかされる。愛する人の命を宿すことだって、こんなにも幸せだ。

「不幸になるから避妊だけには気をつけろ」と父が言う。我が家は私と父母の３人家族。仲がいいから同じ22歳の彼との旅行もちゃんと事前に打ち明けた。「避妊は当然だけれど、できて不幸はどうかなあ」と笑って母が父をいなす。うん、ママそれどういう意味？　「失敗したのよ、婚前のお父さん、23年前」

高校の屋上の私を見て、「幽霊だ」と校庭の元カレが怯えてる。交際中の半年前、飛び降りる、と私は叫んだ。浮気を絶対許せなかった。私は胸をなで下ろす。よかったよ、一命をとりとめて。君が病んで。あの時、止めようとして自分が転落したことを、彼は全く覚えてない。私が手を振り払ったことさえも。

高校の屋上に、またセーラー服の少女がいた。１年続いた元カノだ。校庭の僕を見下ろし、悲しそうな顔をしている。許してほしい、としゃがんだ僕は泣き叫ぶ。小さな浮気が原因で、彼女は心を病んでしまった。最後に握った手の感触を覚えてる。半年前、僕の前で飛び降りた。彼女はいまだに成仏できない。

「幼なじみの嫉妬を煽り、告らせようって寸法だな」と17歳の彼が笑う。いつまでも私がいると思うなよ、と告げた言葉をフラグと受け取ったらしい。病気が見つかり、医者に余命１年を告げられた。「……フラグじゃねえか」。だから違うって。私、本当にいなくなるんだよ。涙を拭って彼が呟く。「好きだ」

「あんた、そろそろ私離れしなさいよ」と彼女が言う。17年間ずっと一緒に過ごしてきた。「いつまでも私がいると思うなよ」。なるほど。これが「フラグが立つ」ってやつか。幼なじみの嫉妬を煽り、告らせようって寸法だな。「能天気。私、本当に言われたの」。え、誰に何て？　「医者に、余命１年って」