掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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「リア充壊す爆弾作ろう」。彼女が言った。いいね、と僕は応じる。ともに二股かけられ失恋した。アパートで理系の僕らは火薬を調合し続ける。難航し、完成まで1年かかった。元カレ元カノ、どっちの家に仕掛けよう。尋ねると、彼女が僕の肩を抱いて囁く。「本当は君も、もういらないと思ってるよね?」

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サークルの飲み会で、大学の先輩2人がじゃれている。気が気でなく、何度も2人を盗み見る。女の子の先輩が、隣に座った男の子の目を両手で塞ぐ。彼は苦笑しながら彼女の頭を小突いてた。お似合いの美男美女。敵わないな、と俯く私を彼が見る。好きなんです。諦めたくありません。同性の彼女のことを。

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「チラチラあの子見てるよね?」。大学のサークルの飲み会で、隣の同級女子に言い当てられた。後輩も時々こっちに視線を向ける。「脈ありかな」と同級生が両手で僕の目を塞ぐ。酔っ払いめ、誤解生むから手を離せ。「誤解じゃないよ、好きなんだ」。え、マジで? 「見ないでね。あの子、私が狙ってる」

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2か月前、高校の後夜祭で打ち明けた。2人きりだと彼女は幼児のように甘えてくる。何度もLINEを送ってきては「返事が遅くて寂しいよ」と拗ねられる。凛とした姿に惹かれてた。距離を置こうと言いかけて、彼女に初めてキスされる。戸惑いと唇の柔らかさ。僕は別れを切り出せない。これは恋か、欲望か。

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高校の後夜祭で告られ2か月。意識していなかったけど、寂しくて頷いた。甘えられ、自分を受け入れてくれる人がいる。彼をどんどん好きになる。昨日初めてキスをした。その深夜、LINEを送ると既読は朝。「ごめん寝てた」と詫びられる。私は不安で眠れなかった。何でだろう。独りの時よりずっと寂しい。

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彼がネットにあげた恋の絵が、また多くの評価を集めてる。多分同じ20代の匿名絵師。あれだけ描けるのだ。思春期にモテてきたに違いない。高校時代の短い恋を思い出す。私の投稿小説は、一度きりのあの恋愛からの妄想だ。同人誌の即売会まであとわずか。筆が進まず私は呟く。あの絵のような恋がしたい。

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人気の彼女がまたネットに恋愛小説を投稿してる。よほど素敵な恋をしてきたのだろう。匿名だけど多分同じ20代。絵師の僕は高校時代に一度だけ、ほろ苦い交際を経験した。ネットにあげてる恋の絵は、全てその変奏だ。同人誌の即売会はもう来月。描けず天を仰いで独り呟く。あの小説みたいな恋がしたい。

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「意外」と2人になって母が笑う。結婚したい彼と会わせた。思春期からなぜか私はよくモテて、仲いい母には相手を全員紹介してきた。今の彼は確かに一番地味で堅実だ。反発してきた父と似ている。「寂しくなるね」と母がこぼす。大丈夫。彼に決めた理由の一つは「お義父さんとお義母さんを大事にする」

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娘が嫁ぐ。思春期からほとんど口をきいてもらえなかったのに、夫は涙ぐんでいる。行き遅れるよりいいでしょう、と私は笑顔で慰めた。「いいな、女親は」と拗ねる夫を抱き締める。今後はもっとあなといさせて。娘とは「姉妹みたい」と言われてきた。いつでも一緒にいたせいで、あなた以上に私は寂しい。

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母校の天文部の顧問になる。秋は例年合宿だ。高2の時、当時の彼女と流星を見た。お互い願いを言わぬまま、卒業後、彼女は遠くに転居した。教師の夢は叶ったが、交際は続かなかった。元気かなと思ったところでスマホが鳴る。「ご予約の確認です」。今年の宿だ。知った声だと感じたのは気のせいだろう。

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