掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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彼に打ち明け拒まれた。「あの人じゃないって言ったのに」と高校の親友が苦笑する。彼女の家で「初恋だよね? まだ自分に合う人、わからないんだよ」と抱き締められた。彼女の体は柔らかく、甘い香りに切なくなる。誰なら合うの、と尋ねかけ、ああそうか、と気がついた。私、こっちの側の女子なんだ。

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高校の同級生に恋をする。制服の胸のボタンを三つあけ、ふざけたふりで膝に尻もちついてみた。スタイルには自信がある。でも彼はなびかない。修学旅行の女湯で、私は気づく。告ってないけど体より心に惹かれる人がいるんだね。彼が時折見つめる幼なじみが、小さな胸と痩せたお尻を湯舟に沈め俯いてる。

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高校の修学旅行の女湯で息を飲む。豊かな胸と丸いお尻。同性の私が見ても彼女の体は美しい。最近、私の幼なじみと距離が近い。半年前、雰囲気で彼に服の上から触れられて「やめとくか」と囁かれた。以来気まずい。いいやとも思ったけれど、幻滅させず正解だった。湯舟で小さな胸に手を当てて、涙ぐむ。

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少し遅くなる、と夫からLINEが届く。会社帰り、隣県の実家に寄るという。夫は今日で37歳。義父の享年を追い越した。「パパ、ばぁばの家?」と小さな娘が尋ねる。「いいな。お菓子もらえるね」。羨ましいね、と私は微笑み、心で誓う。娘が越えにくい親でいよう。幼い頃、私は父母を事故で亡くしている。

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会社を出たところで思い出す。そういえば自分の37歳の誕生日だった。年々、記念日の感覚が曖昧になっていく。もう一つ気がついた。妻に「少し遅くなる」とLINEを送り、駅前で花束を買う。自宅と反対向きの電車に揺られ、親不孝を反省した。実家の母に会うのも久々だ。今日、僕は亡父の歳を追い越した。

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衣替えの日の教室で、視線を感じ振り向いた。高2の彼が同級生と私を見ている。半年前につき合い始め、昨日初めて重なった。ぎこちなく終えた後、「よかった?」と尋ねられる。頷きつつ、やはり内緒にしていた初恋を、私は思い出していた。改めて顔が赤らむ。上手かった元カレが、彼の隣で微笑んでる。

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「つまんねえな衣替え」。高校の悪友が女子を眺めて呟いた。背中が透けないことが残念らしい。そうだね、と話をあわせたところで、彼女が一瞬振り向き頬を染める。悪いけど、もう冬服でも構わない。背中を見つめる悪友に心の中で僕は囁く。半年前から内緒で彼女と交際している。昨日、初めて経験した。

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1日朝ノベプラに投稿した長編『ぼくと初音の夏休み』39話(https://t.co/pOo9K330xN)は8000字超でした。短編ほどの分量で、分割しようか悩み、結局そのまま出しました。読んで下さった方に感謝です🙏
朝のツリーにぶら下げた架空の飲食店のロゴはCanva(https://t.co/ZBeEWFBFG6)で創りました🐬

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幼なじみが背中に飛び乗る。高1の昨秋はじゃれて手を握り、中3では首を絞められた。やっぱ僕は異性と意識されてない。片想いが苦しくて、好きな子ができたと嘘をつく。「じゃ今年はお情けいらないね」と彼女が笑う。去年は手袋、一昨年はマフラーを編んでくれた。サイズが合っていたのはなぜだろう。

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えいっ、と彼の背中に飛び乗った。17歳の幼なじみはまた成長している。「こういうの、もうなしな」と苦笑された。何よ、好きな子でもできたとか? 茶化して尋ね、思いがけず頷かれる。そっか、がんば、と私は笑い、心の中で涙ぐむ。買った毛糸をどうしよう。今冬こそセーターに挑戦しようと思ってた。

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