掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのプロフィール画像

掌編小説(140字)@単行本『ぼくと初音の夏休み』『ごめん。私、頑張れなかった。』発売さんのイラストまとめ


本業は別分野の物書きです。140字小説集『ごめん。私、頑張れなかった。』(リベラル社)、長編『ぼくと初音の夏休み』(扶桑社)、縦読み漫画(原案)『とある溺愛のカタチ~掌編小説アンソロジー~』(ブックリスタスタジオWebほか各種サイトで配信)。リンクは固定ツイートご参照。創作系のお仕事はDM下さい。
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2025-11-17

「BL趣味があったのか」。持ってた漫画を取り上げられ、高2の彼に驚かれる。「俺だってイケメンだろ」。どうかなあ。「体格も主人公に負けてない」。だったらさ、お姫様抱っこでもして、ちゃんと想いを体感させて。「……わかったよ」。きゃ♥ ついに耽美な愛の世界の扉が開くのね。「返すよ、漫画」

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2025-11-17

高校の教室で時々目が合う男子がいる。私も彼もクラスのぼっちだ。夏休みに会わなくなり、微笑む彼にどれだけ孤独を救われていたか気がついた。やぼったい髪を切り、眼鏡からコンタクトに変えてみる。もう少し見てもらえるようになるだろうか。二学期目前、私は思う。勇気を奮い彼との距離を縮めたい。

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夏休み明け、高校の教室がざわめいている。目立たなかったクラスの女子が、眼鏡を外し垢抜けていた。一学期、幸福な思いで僕だけが見つめていた宝の原石。夏に恋して磨かれたのだろう。一軍男子に囲まれた、彼女と一瞬視線が重なる。目を伏せ思う。さらに綺麗になったのに、今は彼女を見るのが切ない。

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今夏こそ最後をこの目で見たい、と私は願う。去年、彼と訪れた。最後の前の打上花火が失敗し、2人のそばに火が落ちた。大会は中断され、最後の花火は上がらなかった。川岸を半歩前に進みかけ、腕を掴まれたような感じがする。そうか、気づかぬ彼も来てるんだね。あの夜、私は助かり彼だけが焼死した。

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「次が最後」と彼女が呟く。去年2人で訪れた。交際最初の夏だった。最後の前の打上花火は失敗し、大会は中断された。「今年はこの目で最後を見たい」。君には無理だ、と切なくなる。あの夜、僕らのそばに炎が落ちた。彼女は気づかず魂だけが彷徨い続ける。握ろうとした細い腕が、僕の指をすり抜ける。

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高校の屋上で同級生が祈ってた。彼は生徒会だから合鍵を持っている。幽霊が出ると嘘をつき、夜に彼を尾行した。やはり行方不明の少女はここか。5日前、少女は私を装い片想いの彼に会いに行く。すがった私が嫌われてるのも知らないで。彼に囁く。君が殺した遺体の子、元カノの私じゃなく双生児の妹だ。

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「屋上に幽霊が出るらしい」と高校の同級生が囁く。5日前から彼女の姉は行方不明だ。「生徒会なら合鍵あるよね? 確かめたい」と同級生。断って、その夜、一人で忍び込む。成仏しろ、と元カノの腐乱遺体に必死で祈った。「噂は嘘」。振り向くと同級生だ。「つけてきた。やっぱり君が殺してたんだね」

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「私は戻りたくない」。高2の彼女が反論する。夏休みはもう終わり。一学期の終業式までリープしたいと僕は言った。あの日以来、「そればっかりは嫌なんだ」とはぐらかされ続けてる。気持ちはわかる。大事にしたい。でもさ、終業式後の可愛い姿が忘れられないんだ。あの日、僕らは初めて男女になった。

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